I INTERPRET LONDON

ロンドン在住の通訳者平松里英のブログ

Tag: 英語

Topic 01: 会話のかみ合わせを左右する 5W1H の黄金ルール

Pixta 29880703 S

ロンドン在住通訳者の平松里英(rielondon)です。

今回は、ビジネスの会話、そのかみ合わせを左右すると言っても過言ではない、

ゴールデンルール について、お話しします。
こちら、自分が英語で話す時はもちろんですが、


通訳者が訳す時にも、話し手が心得ていてくれると、

そうでない時と比べて、うんと訳しやすいものなのです。

なので、通訳者に入ってもらうときにも、できるだけ、意識してみて下さいね。

それでは説明していきましょう。

ご存知の方も多いと思いますが、英語には、大きく分けて、

クローズドクエスチョン という、言わば「閉じた質問」と、

オープンクエスチョン という「開いた質問」の二種類があります。

クローズドクエスチョンは、YESかNOで答えられる質問のこと。

オープンクエスチョンは「だれが」とか「いつ」
などの疑問詞が文頭(中)に入っている質問のこと

です。

「5W1H(ごだぶりゅう いちえいち)」

というフレーズを、皆さん
覚えていますか。

中学高校の英語の授業で、必ずや、一度は聞いたことがあるはずです。

  • When(いつ)
  • Where(どこで)
  • Who(だれが)
  • What(何を)
  • Why(なぜ)
  • How(どうやって)

というやつです。

疑問文(など)のあたまに持ってくるやつですね。

頭文字をとって、5W1H と呼ばれる所以ですが、
疑問文を作るだけではなくて、
とても重要な英語のルールが詰まっているのです。

どういうルールかと言うと、クローズドクエスチョンの場合は、
YES か NO、あるいは I Don’t know で答えなければならないということ。

違う言い方をするなら、YES と NO 以外で答えてはいけない質問、です。

至極、当たり前に聞こえますよね。

当たり前のことが当たり前にできてないってことありませんか?

そういうものなんですよね。

で、とりあえず、話を進めます。

では、オープンクエスチョンの方はと言うと、

Who なら「だれ」、
What なら「何が/を」

これらが登場する質問は、それに当てはまる 特定の情報
(いつなら年月、日時など、どこなら場所、誰なら名前など)を抜かさずに
ちゃんと入れて答えることがお約束となっているのです。

WHY なら Because で返答を始める。

そうです。

誰かに「Why △△?」と訊かれたら、

BECAUSE △△△.」と答える

ということです。

これらが、定型。つまり、お約束なのです。

これ、押さえておくことが大事です。

本当に無意識にできていないことが、とても多いです。

くどいようですが、もう一度言います。

相手から質問されたら、思わず答えようとする前に、
まず、

クローズドクエスチョンか、オープンクエスチョンか、

それを判別するようにしてみてください。

前者なら、YES か NO で答える。
それが無理なら、I don’t know で。

後者なら、5W1H のルールに則って答える。

これをきっちりと繰り返し実践させてくれるレッスンがあってもいいと思っています。

英会話のレッスンとして ではなく 話し方のレッスンとかコースとして。

それこそ、英語と言わず、日本語でもOKだと思います。

まずは、反射神経を養う必要がありますから。

いちいち頭で考えないといけないようでは、なかなかうまくいかないと思うので。

スポーツみたいな部分があるので、筋肉に覚えこませる。

反射的に、YES/NO クエスチョンなのか、情報を求められている質問なのか、

反応できるようになると、コミュニケーションの第一段階としては、
グッと分かり合えるようになると思うんです。

実際は、ビジネスの場でも、
クローズドクエスチョンに対して、長々と説明で返答する人や、
オープンクエスチョンに対して、YES!と返答する方は 決して 珍しくありません。

日本語話者に限ったことかといえば、そうともいえない部分はあるのですが、

オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンの区別がつかずに、
自分の好きなように返答する人は英語話者の中には、まず いない と思います。

それなりに、学校で English
(=日本語で言うところの国語ですが国語とは呼ばない)
の教育を受けた人であれば、ここがいい加減ということはないはずです。

ただ、分かった上で、説明を加えたり、することはあります。

ルールを理解した上で、ルールを破っている例です。

今回お話ししようとしたのは、そういう上級の話ではなく、

何か訊かれたけれど、適当に答えた、それに対して「あれでよかったのかな?」と

疑問に思わない人もいますよね。

本人は答えたつもりだけれど、

じつは「答えになっていなかった」かもしれない・・・と、

ちょっと意識してもらいたくてこの話をしました。

英語を話すようになって、日本語で話しても、この視点からよくよく考えてみると

何を言おうとしているのか自分自身がわかっていなかった、と愕然とさせられることがありました。

外国語を学ぶとそういう気づきがあるというのは収穫ですね。

この「何を言おうとしているのかわかっていないのかも?」

「え、この情報を入れないと答えたことにならないって今まで考えたことなかったんだけど⁉️」

という感覚は、日本語には、あまりない気がするのです。

相当 意識的に 話している人以外は。

 

英語で会話していて、なんだか話が噛み合わない時は、

(話が噛み合っていないことに、まずは、気づいていただきたいのですが・・・)
これが一因となっていることがあるので、気を付けて、話すようにしてみると、

会話のキャッチボールがそれまでよりもスムーズにいくかも知れません。

推奨!名古屋市科学館のプラネタリウム

名古屋にすごいプラネタリウムがあるのをご存知でしたか?
コアの宇宙ファン、星空ファンにもたまらない素晴らしいプラネタリウムが、名古屋にあるんです!

ロンドン在住通訳者の平松里英(rielondon)です。

前回のお約束通り、今回は「名古屋市科学館」のプラネタリウムについて取り上げます。

ご存知でしたか?

とある「世界のプラネタリウムトップ10(10 Best Planetariums in the World)」情報によると、

名古屋市科学館のプラネタリウムは 世界 第3位 につけているんです!

 

ちなみに、第1位は、ニューヨークのヘイデン・プラネタリウム

第2位は、カリフォルニアはグリフィス天文台にあるサミュエル・オシン・プラネタリウム

 

名古屋市科学館:世界最大のプラネタリウム!

ここでは、名古屋市科学館のプラネタリウムは、こう紹介されています。

 

Nagoya City Science Museum, Nagoya City, Japan – The Nagoya City Science Museum is home to the biggest planetarium in the world with a dome diameter of 35 meters (115 ft), and 350 seats. But this planetarium is not just the biggest, it’s also one of the most sophisticated and highest quality planetariums ever built

世界最大のプラネタリムは名古屋市科学館にあり、ドームの内径が35メートル(115フィート)、座席数350。このプラネタリウムは大きさが世界最大というだけでなく、これまでに建築されたプラネタリウムの中で最も洗練されたプラネタリウムのひとつで、最高級のクォリティを誇るプラネタリウムである。

 

この世界最大(the world biggest)という表現に注目。

(ギネスブックに載っているそうです。)

通常はone of the most(最も~な○○のひとつ)と、言い切らないことが多いのに、

ここでは完全に言い切っており、文句なしの世界最大級であることがうかがえます。

 

こちらの世界ベスト10ランキングが載っているサイトはアメリカのサイト。

 

そのため、アメリカのプラネタリウムが優先されるのも無理はないと思う次第ですが、

それでも、世界最大級で第2位に付けているカリフォルニアのプラネタリウムは、内径23メートル。

 

名古屋市科学館のプラネタリウムは、その約1.5倍。

 

つまり、カリフォルニアのプラネタリウムは 直径が約7.3メートル。

名古屋市科学館のプラネタリウムは 直径が約11.1メートル。(約1.5倍)

 

ということは、

体積は3倍以上(1.5の3乗)という計算になります。

すごいですね!!

 

でも確かに行って見るとわかりますが、大きいですよ。

大きいと、つい映像が荒くなるような気がしませんか?

ところがどっこい、映像も素晴らしい!

旧プラネタリウムと比較対象にならないくらいです。

 

Greenwich Observatory Planetarium

Greenwich Planetarium

私、ロンドンではグリニッチ天文台にたまに行きます。

グリニッチは子午線・天文台だけでなく、

他にも見るところがたくさんあるので会員になっているのですが、

グリニッチ天文台にも、小さいですがプラネタリウムがあります。

(上の写真)

じつは、プラネタリウムが好きなのも会員になっている理由のひとつなのですが、

名古屋市科学館のプラネタリウムを体験した後では、

やはり物足りなさは否定できません。

 

 

Planetarium NCSM

Planetarium Nagoya City Science Museum

最初のプラネタリウムは1962年11月に開館され、2010年の8月に立て直しのため(一時)閉館。

名古屋市科学館のプラネタリウムは、2011年にリニューアルされました。

 

名古屋市科学館のプラネタリウム:難点―その壱

私はリニューアルされたプラネタリウムには、1度しか行ったことがありません。

海外に住んでいるからということも大きな理由なのですが、

じつはチケットが取れなくて気軽に行けない!

これが難点。。。

 

空席情報のページを見ていただくとわかるのですが、前売り券はありません。

※展示室のみ(つまりプラネタリウムはなし)であればコンビニの前売り券が購入可能。

当日、朝9:30から その日のすべての回の観覧券が売り出される 仕組みになっているので、

観覧券を取りに並ばなければならない のです。

 

私が行ったときは、取れたのが午後の回だったので、

朝並んでチケットを取って、午後出直しました。。。

各回の空き状況はネットで確認できることはでいるのですが、予約が取れない。

 

それから、電子申請サービスも以前はあったようですが、現在は停止されています。

 

さらに、購入日より1年間有効な「定期観覧券」なるものが存在し、

プラネタリウムにも有効なオプションもあるようですが、

当日いきなり行って入れてくれるのか、それとは別に整理券(?)を取らなければならないのか、

そのへんは不明。

 

名古屋市科学館のプラネタリウム:難点―その弐

「よくある質問」の上の方に、

「プラネタリウムの解説を外国語で聞くことはできますか?」 という質問があり、

 

その答えが、

「当館のプラネタリウムは日本語で生解説を行っています。翻訳装置や同時通訳などもありませんのでご了承ください。」 

となっています。

 

これ

「あ、外国の方には来ていただかなくても間に合ってます。」

って言われているようなものですよね(涙)

 

これは、惜しい…。

 

いや、外国人観光客のなかにも「行ってみたい!」という人がいると思うんですよ。

 

実際、家族でプラネタリウムに行きたいと思っていても、

「うちのお父さん(お母さん)日本語じゃわからないし…」

みたいな理由で

「じゃあ、やめ。別のところにするか、残念だけど」

というケースも 少なからず ある気がする。

 

まあ、毎日コンスタントに動員数が見込めるかどうか、絶対数が多いかどうかはわかりません…。

投資に見合うだけのリターンが見込めるのかどうか、それは確かに私にも測りかねるのですが…。

 

ただでさえ人気があって、客集めには困っていない模様。

外国語対応までしなくても十分やっていけるし、対応する余裕なんてありません。

ということなのかもしれませんが…。

↑ いや、本当のところ、どうかわかりませんけどね(汗)

 

でも!

ここのプラネタリウム、

大きいだけではなく、映像クォリティもプラネタリウムとしては世界一なんです。

 

日本が世界に誇れる、

ハイテクなだけじゃない、

学芸員の解説がとっても優れている、

足を運ぶ価値のあるプラネタリウムなので、

 

ぜひ外国人の方々にも(観光客でも居住者でも)

その素晴らしさを堪能してもらえるようになると、いいなとおもいます。

 

「本物に限りなく近い星空」を再現すること

2012年に掲載された記事※のなかの、学芸員の話によれば

“本物に限りなく近い星空”を再現すること。それが今回のリニューアルの最大の目標であり、こだわりでした」。

そのこだわりには、「プラネタリウムで星を見る楽しさを知ったら、自宅に帰ってから実際に夜空の星を眺めてほしい」という、

小林ら天文係6人の学芸員に共通する思いがある。

革張りのリクライニングシートは すごーく快適

さらに、椅子が左右に動きます。

動くというか、回る・揺らせる感じなので、

首をうーんと曲げたり、頭を逆さにしなくても、椅子を傾けるだけで

北の空も、東の空も、西も南も、見たい空が楽しめます!

科学館というより、上質の映画館という感じです。

 

日経BiZアカデミー「本物に限りなく近い、名古屋市科学館『プラネタリウム』」

 

 なぜ、名古屋にこんなにすばらしいプラネタリウムがあるのか?

思うに、旧プラネタリウムのときから、生の解説があり、素晴らしかった。

私はプラネタリウムと言えばそれが当たり前だと思っていたのですが、違いました。

プラネタリウムに行って、専門的な生解説があるなんて、非常に恵まれていること。

関わる人たちの期待度がおのずと高かった。それで、新しくすると決まった時にも、

もともと求めるレベルが高かったのだと思うのです。

私の推察でしかないのですが。

 

学芸員の方たちの解説は、乙姫と彦星のお話でとどまってはいません。

(乙姫と彦星のお話は、誰もがなじみがあり、導入として重要。)

難しい天文学の話をかみ砕いて、

一般人にもわかりやすく、

興味深いお話、

にしてくれます。最高ですよね

 

あまりにリラックスして、ついつい寝てしまう私。(陳謝)

 

名古屋も外国人居住者が増えていますから、英語の解説があったら

(もちろん、中国語やポルトガル語もあったらあったに越したことはないのですが)

世界最大(世界最高!)のプラネタリウムとあらば、

「一目見たい人は、そりゃあいるでしょう、日本まで来るインセンティブになるでしょう」

と思います。

 

それに、ここはアクセスもいい。

名古屋駅から近いですから。徒歩10分、地下鉄なら一駅。

 

英語のガイドブックで、名古屋のページがあまりに少なくて(1ページに満たない)とても悔しい筆者でした。

 

英語のコンテンツがあったら、それだけで、見開き2ページ費やすくらいの価値はあると思う。

 

というわけで、近々、英語でも名古屋市科学館のプラネタリウムについて書くことにします!

 

【関連サイト】

バリアフリー対応など、名古屋市科学館に関するくわしい情報は以下の公式サイトからご覧ください。

名古屋市科学館プラネタリウム 公式サイト

LAのアイコンに迫るグリフィス・天文台編

 

 

Photo:
http://www.ncsm.city.nagoya.jp/visit/planetarium/about/index.html
http://www.visitgreenwich.org.uk/events/planetarium-shows/

 

フォーカスグループインタビュー(FGI)の通訳 [1] 通訳環境について

ロンドン在住日英通訳者の平松里英(rielondon)です。今回は、シリーズ第1弾—通訳と音量についてです。

フォーカスグループインタビュー とは

マーケティング調査の方法には、「定量調査(Quantitative Research)」と「定性調査(Qualitative Research)」があります。定量調査は、「量」。つまり明確な数値・量であらわされる定量データを集め分析するもの。定性調査は「質」。つまり、数値化できない個人の発言・行動を解釈し新しい理解やヒントにつながる「質的データ」を取る調査のことです。頭文字をとって「FGI」、または略して「グルイン」とも呼ばれます。

後者の「定性調査」の手法のひとつとして、フォーカスグループインタビュー があります。少人数の想定購入者からなる参加者グループに司会者(モデレーター)が進行しながらディスカッションを進めます。そこで繰り広げられる発言内容を分析するものです。

なぜ通訳が必要になるのか

フォーカスグループインタビュー でなぜ通訳者が必要になるかというと、対象者が依頼者(クライアント)のわからない言語を話す場合(非日本語話者)、つまり海外の想定購入者を相手に調査を行うとき、通訳が必要になります。この場合、所定の時間(1セッション2時間程度が多い)で約4~8人の複数の人が代わる代わる発言するので、通訳モードは同時通訳になり、同時通訳対応の設備が必要になります。(ユーザーインタビューなどは逐次通訳の場合もあります。)

フォーカスグループインタビューでの通訳環境の重要性

クライアント(企業)と同じ部屋(対象者+モデレーターのいる部屋とマジックミラーで隔てた反対側の部屋)で行うときと、別の部屋で通訳をする場合とがあり、通訳を取り巻く環境に関しては、主に以下の4つのパターンがあります。

同室/別室 通訳への音のインプット 通訳のアウトプット
〔1〕 同じ部屋 セッションのやり取りはヘッドフォンから 通訳の訳出は普通の声で
〔2〕 同じ部屋 セッションのやり取りはスピーカーから 通訳の訳出は耳元でウィスパリング
〔3〕 別々の部屋 セッションのやり取りはヘッドフォンから 通訳の訳はヘッドフォンから
〔4〕 別々の部屋 セッションのやり取りはヘッドフォンから 通訳の訳はスピーカーから

〔パターン1〕

同じ部屋の場合、よくあるのは対象者やモデレーターの声(セッションをやっている部屋からの音)は通訳者の耳にヘッドフォンから流れてきて、クライアントの人たちは通訳者の声をそのままマイクを通さずに聞くことが多いです。

〔パターン2〕

同じ部屋で、対象者やモデレーターの声(セッションをやっている部屋の音)はクライアントも通訳者もスピーカーから聞き、通訳者の訳出はクライアントの耳元でウィスパリング。

〔パターン3〕

別の部屋で、通訳者の訳をマイクで拾ってクライアントの部屋のスピーカーで流し、セッションの中での外国語でのやり取りはヘッドフォンで(クライアントのうち)聞きたい人は聞く。

〔パターン4〕

別の部屋で、クライアントの中で英語のままで分かる人が多い場合は、セッション(対象者とモデレーターの英語のやり取り)はスピーカーで流し、通訳の訳はヘッドフォンで通訳が必要な人だけ聞くというパターンもあります。

ベストパターンとワーストパターン

では、このなかでベストのパターンと最悪のパターンはどれでしょう。

ベストは〔1〕、そして最悪なのは〔2〕のパターンです。1・3・4は通訳者の耳にはヘッドフォンで音が送られてきますからインプットの条件は(ほぼ)同じです。では「なぜ1がベストか」というと、

  • 視界がクライアントと同じであること(別部屋=通訳部屋は狭く視界が悪いことが多い)、
  • クライアントとのセッション中のコミュニケーションが比較的はかりやすいから。

他方、最悪のパターンはどれかというと「2」で、その理由は、通訳者がインプットをクライアント全員と同室でステレオから聞かなければならないこと。

なぜそれが問題なのか。

クライアントはセッション中お互いに相談をしたり、談笑したりすることもあります。それだけではありません。ドアの開閉、その他にも様々な雑音が発生します。

ノイズの発生頻度(リスク)が一番高いので、通訳作業が妨害されるのです。

しかも、インプットを確保するため、また、通訳が必要なの人がクライアントのなかの一部の人であることもあり、アウトプットはウィスパリングになります。

このとき、

通訳者は黙って聞いているのとは違い、自分の声が自分の耳に聞こえている状態です。

どういうことかというと、

外から耳に入ってくる自分の声、それプラス、骨伝導で耳に入ってくる自分の声が邪魔になるのです。訳さなければならない音声(話者の発話)を聴くことに集中したい。それにも拘わらず、不可避に自分の声という邪魔が入ってきます。

聴きながら話しているためです。ステレオからの音が黙っているときのようにはきれいにきこえません。

これが、聞いているだけの作業と、同時通訳の作業の決定的な違いです。

このように、同時通訳をするときは常に邪魔が入るので、できる限りノイズを減らし、元発言のインプットを確保するようにしなければなりません。

大事なことなのでもう一度、言い換えてみます。

同時通訳作業では、インプットアウトプットの音が干渉してしまうのです。

当然、作業の大きな妨げとなります。

だからこそ「2」のパターンには無理があるのです。

通訳者は、ステレオから流れてくる音(英語)を頼りにしながら、「生耳」(=ヘッドフォンからではない)で聴き、クライアントにウィスパリング(アウトプット)しますが、ステレオから流れてくる音のボリューム(インプット)よりも通訳者の声(アウトプット)のボリュームが大きくないとクライアントには聞こえないので、ある程度大きな声を出さなければなりません。同じ空間で、です。

しかし、上で説明したように、大きな声を出すと自分の声が邪魔になって、インプットがとても聞こえづらい

そして、「2」の場合、ヘッドフォンで別ルートから音源を取る、つまりインプットをバイパスする、ということができません。インプットが確保できない。

部屋の中で歩くときの靴の音やドアの開け閉めの音、クライアント同士の話し声や、冷蔵庫の開け閉め資料(紙)をめくる音など様々なノイズがたくさん!

このなかで行うのですから、ノイズの三重苦になってしまうのです。

このようなことから、せっかくの対象者のレスポンスが十分に拾えなくなってしまうので、この方法はお勧めできないというわけです。

通訳環境:最重要ポイント

どのパターンにも共通して重要な要素は音量です。そのことを音響システムを調整しているテクニシャン(技術者)が心得ていて、スタジオ設計にも反映されていればいいのですが、音質・音量の調整がほとんどできないスタジオもあるので場所を選択する際に気を付ける必要があります。

発言が重ならないよう、一人一人順番に話してくれるよう、どれだけ参加者に注意を促しても、発言が重ってしまうことが多い。これは他の通訳の仕事と大きく異なる点です。

通訳者は音量を上げたり下げたりして、条件を調整するしかありません。

また、自然な発言、自由な発言を集めることが大切になりますから、発言が重ならないようにモデレーターに何度も注意させれば、話の流れを遮ったり、場の雰囲気をぎくしゃくさせてしまいません。これでは、そもそもの目的が損なわれてしまいます。

やはり、フォーカスグループインタビューでは、音量コントロールが通訳側でできる、音調整能力の高いスタジオを選択することが重要なポイントです。

最後までお読みいただきありがとうございます。今回の記事はいかがでしたか。ご質問、コメント、そしてご相談も大歓迎です。コメント欄、お問い合わせページ、またはTwitter からどうぞ。

この機会に、ぜひ読者登録してみてくださいね。

イギリス、ヨーロッパ地域の現地通訳をお探しの方

ロンドン在住の通訳者 平松里英のウェブサイトRie.Londonをご覧ください。

(私が制作・運営しています。ウェブサイトの翻訳・共同制作のご相談も受付中。)

ボイスサンプル、ビデオサンプルも視聴できます。

 

イギリス、アイルランドからヨーロッパ全域へ出張して通訳しています。

こちらのカテゴリーでは色々と「通訳」という仕事について書いています。

対応地域はEMEA地域。イギリス国内、ヨーロッパだけでなく「欧州の裏庭」ともいわれるアフリカ諸国、中東へもイギリスから飛行機で7~8時間ほどですので効率的です。

ご連絡をお待ちしています!

平松里英にメールする

ページの右下、チャットで質問にお答えします。

※記事は、時代の変化に合わせて、随時加筆したり改訂したりしています。

国連事務総長 就任「2017年を平和の年に」演説

Appeal for Peace 01.01.2017

ロンドン在住日英通訳者の平松里英(rielondon)です。今回は 国連事務総長正式就任2017年年初の演説 を取り上げます。「気になる英語表現」は最後にあります。

 

【今日取り上げるニュースメディア】

UN News Centre New UN chief Guterres pledges to make 2017 ‘a year for peace’

【ざっくりサマリー】

✔ 新 国連事務総長にポルトガルのグテーレス氏が正式に就任

✔ 年初の演説で「2017年を平和の年に」と訴え

✔ 次期 国連事務総長に決まったのは2016年10月13日

✔ 任期は5年後の2021年12月31日まで

✔ グテーレス氏の略歴

2017年1月1日 新 国連 事務総長の正式就任

2017年元旦、第9代 国際連合事務総長にアントニオ・グテーレス(António Guterres)氏が国連総会(the UN General Assembly)にて正式に就任しました。

「これまでは安全保障理事会が候補を一人に絞り、この唯一の候補のみが国連総会に提案されていました。安全保障理事会でのいわゆる密室の協議で事実上決定されていたため、選出プロセスの閉鎖性に批判が集まっていました。」(http://www.unic.or.jp/news_press/info/18566/)

これを受け、2016年4月には国連初の試みとなる公開面談が行われ、10月に初めに国連安全保障理事会(the UN Security Council)が国連総会に勧告し、就任が確定しました。

そして、就任宣誓式(swearing in – ceremony)が12月12日でした。

激震の2016年、2017年は?

「一年の計は元旦にあり」

暗澹たる、そして激動・激震の2016年が幕を閉じ、続く新年の幕開けでの交代だけあって、

2017年を方向づける幸先の良い出発だったと、後で振り返れるよう願わずにはいられません。

国連事務総長の任期

さて、グテーレス新事務総長(Secretary-General)は1995年から2002年までポルトガルの首相を務め、

2005年から2015年までは国連難民高等弁務官(the UN High Commissioner for Refugees )として様々な活動に従事。国連事務総長の任期は5年なので、2021年末までということになります。

なお、第8代の国連事務総長 藩基文氏の任期は2007年から2016年までの10年間(つまり5年任期を2期)でした。

これまでは、近年では、第6代事務総長 エジプトのブトロス・ブトロス-ガーリ氏が、アメリカが再選に際し拒否権を発動したため5年で退任した以外は、第7代 コフィ・アナン氏、第5代 ハビエル・ペレス・デクエヤル氏も2期(10年)務めています。

事務総長による新年のスピーチ全文

新事務総長は新年の抱負として、“Peace must be our goal and our guide” と述べ、2017年を平和に向けた年とするようすべての市民、各国政府、指導者たち(all citizens, governments and leaders)に向けて様々な相違を超える努力をするよう(to strive to overcome differences)訴えました。

2017年1月1日 国連事務総長スピーチ 平和への訴え -全文-(Appeal for peace from UN Secretary-General Antonio Guterres)

他メディアの関連ニュース

2016年10月13日のCNNニュース「国連がポルトガルのアントニオ・グテーレス氏を次期事務総長承認 (UN approves Portugal’s Antonio Guterres as next secretary-general)

では、10月5日に逃げ切りの最有力候補as the Security Council’s runaway favorite)となっていた氏を193加盟国の全会一致で次期事務総長となることを承認したと報道されています。

どんな国連事務総長になるでしょうか。

2016年10月6日のBBCニュース 「グテーレス氏とは誰なのか。次期国連事務総長の人物像 (Who is Antonio Guterres? Meet the UN’s next secretary-general)」では、

グテーレス氏は副事務総長に女性を起用すると予想されます。「男女共同参画」の国連における重要性を説いてきたからです。

He is widely expected to select a woman as deputy secretary-general, having said that “gender parity” is crucial at the United Nations.

とあり、

ヨーロッパ外交評議会の研究員、リチャード・ゴワン氏によれば、内部関係者はポルトガル出身のグテーレス氏が「国連に必要な『尻叩き』をしてくれるのではないか」と話している、とのこと。

Richard Gowan, a UN expert at the European Council on Foreign Relations, said insiders believed Mr Guterres, from Portugal, “could give the UN the kind of kick up the backside it needs”.

グテーレス氏の背景

グテーレス氏は、50年余り続いたポルトガルの独裁政治が終焉した1974年に社会党に入党し、間もなく専従の政治家になりました。[それ以前は大学で電気工学と物理を勉強し助教授をしていた。]

He joined the Socialist party in 1974 – the same year five decades of dictatorship came to an end in Portugal – and soon became a full-time politician.

 

1995年には社会党の書記長に就任、のちに首相に就任し2002年まで務めました。

In 1995, three years after being elected the Socialist Party’s secretary-general, he was voted in as prime minister, a position he held until 2002.

 

今回の国連事務総長の指名前のUNHCR(国連難民高等弁務官)としての経験が今回の人事への試金石(=意訳)となりました。

Prior to his nomination, he said that his work at the UNHCR had been excellent preparation for a secretary-general.

第9代 国連事務総長の役割

事務総長の役割(The role of the Secretary-General)」に、以下のように記されています(抜粋)。

立場が対等な外交家であり唱道者であり、公務員であり、CEOである、事務総長は国連の理想の早朝であり世界の人々、なかでも特に貧しく弱い人々の利害における代弁者である。

Equal parts diplomat and advocate, civil servant and CEO, the Secretary-General is a symbol of United Nations ideals and a spokesman for the interests of the world’s peoples, in particular the poor and vulnerable among them.

 

《注目の英語表現》

  • The UN Security Council  国連安全保障理事会
  • The UN General Assembly  国連総会
  • gender parity  男女同権、男女共同参画
  • at the helm of the United Nations  国連の舵取り役に当たり
  • civilians are pounded with deadly force  市民が致死性の高い武力で猛攻撃を受けている
  • forced from their homes, dispossessed and destitute  家を追われ、貧窮しており
  • fueling cycles of mistrust and fear that can last for generations  不信と不安の循環のエネルギーとなって何世代nにも続く可能性がある
  • peace must be our goal and our guide  平和が私たちの目標であり、手引きでなくてはならない
  • I appeal to you all  懇願する(切に訴える)
  • equal parts diplomat and advocate  立場が対等な外交家であり唱道者
  • the poor and vulnerable  貧しく弱い立場にある人々

 

今年最初の記事は1月1日のグテーレス氏のスピーチの中から、次のことばで締めくくろうと思います。

それではまた!

 

“all that we strive for as a human family […] depends on peace.

人類 として私たちが尽力することのすべては平和にかかっています。

But peace depends on us.”

ところが、平和は私たちにかかっているのです。

 

ご質問、コメント、そしてご相談も大歓迎です。コメント欄、お問い合わせページ、またはTwitter からどうぞ。

 

▶ 関連記事 国際連合広報センター「この人に聞く:次期国連事務総長に任命されたアントニオ・グテーレス氏」

 

イギリス、ヨーロッパ地域の現地通訳をお探しの方

ロンドン在住の通訳者 平松里英のウェブサイトRie.Londonをご覧ください。

(上記ウェブサイトは私が制作・運営しています。ウェブサイトの翻訳・共同制作のご相談も受付中。)

ボイスサンプル、ビデオサンプルも視聴できます。

 

イギリス、アイルランドからヨーロッパ全域へ出張して通訳しています。

こちらのカテゴリーでは世界の動き、最近の世界のニュース・情報の中で使われている英語表現・時事英語について書いています。

対応地域はEMEA地域。イギリス国内、ヨーロッパだけでなく「欧州の裏庭」ともいわれるアフリカ諸国、中東へもイギリスから飛行機で7~8時間ほどですので効率的です。

平松里英にメールする

※記事は、時代の変化に合わせて、随時加筆したり改訂したりしています。

 

カテゴリー:世界の動きと英語

通訳という不思議な職業…?入門編

ロンドン在住通訳の平松里英(rielondon)です。
 いつも楽しく読ませていただいている『日本とアメリカで働く翻訳者のブログ』。
 

そのなかの「謎の職業?翻訳者」と「翻訳者と通訳者の大きな違い」という2つの最近の記事。

これを受けて通訳の視点から書いてみました。(はなさんにはご了承をいただいています)

このブログオーナーのランサムはなさんとは面識があり、尊敬する翻訳者さんです。

はなさん、これから通訳の勉強をされるんですね!がんばってください。応援しています!

それでは、さっそく書いていきたいと思います。

まず、はなさんが異業種の方々と交流していてほとんどの方に言われるという「翻訳の人って、今まで会ったことがない」というもの。通訳はどうでしょうか。

翻訳と違い、あまり家でやる仕事ではないので、私個人の経験ではさすがに言われたことがないですが、翻訳と通訳とを同義に思っている人が多いのは確かです。

通訳の場合、仕事を通して人と会うことが多いので、上記のやり取り自体があり得ないということもあるかもしれません。

それでもオンラインなどでフォームに記入するときなど、職業や業種を選ぶドロップダウンメニューの中にいまだに含まれていないところを見ると、両方とも、やはり知られていない、誤解されている職業なのかもしれません。歴史の古い仕事なんですけどね。

通訳で圧倒的に多い勘違いは「英語(他言語)が話せればできるんでしょ?」と思われていることです。日本(人)にはまだまだ日本語しか話さない人が多いから通訳が必要だけど、みんながもっと英語が話せるようになれば、通訳なんて「この世からなくなる仕事だ」と思っている人の多いこと!

さすがにこれを面と向かって言われることはないですけれど、相手がそういうふうに考えている時、いくらなんでもわかりますよ。

通訳という仕事に対する誤解の中で、声高に言いたいと常日頃思っているのが、通訳するスキル=外国語が話せる「ではない」こと。

通訳するときに必要なスキルの中でつくづく忘れられているな、と思うのは「記憶保持」。

通訳とは、平たく言うと、話されたことを順番通りに、理解し、覚えておき、もう一つの言語で再現するという作業ですから「正確に」「覚えておく」というスキルが「ものすごく」大切なのです。

どうでしょうか、外国語を勉強するとき、書く・読む・聞く・話すの4スキルは練習するけれど人のスピーチをそっくりそのまま「記憶する」練習なんてしますか?しませんよね?

学生時代にE.S.S.に入っていたのですが、そのスピーチ委員会に入っていた人たちはキング牧師の「I have a dream」のスピーチを毎日毎日練習して、マントラのように唱えて丸暗記するまでやっていました。そのような場合はともかく、普通に語学を勉強するときに、人の話を要素を漏らさず「再現するつもり」で聞いている人はいないと思います。

記憶保持(リテンションと言います)のスキルだけについていえば、外国語スキルとは関係がなく、単一言語でも練習ができる。通訳するにはなくてはならないスキルだけれど、外国語能力とは別の能力です。

翻訳と通訳で似ているところは、まず高度な語学力が必要なところ。「確かに英語は勉強しているから、知識はある…だけど、しゃべれるかどうかは全く別の話」 ― そう、聞いてわかるのと同じレベルで話せるかと言ったら、そうじゃないのは、中学高校大学と10年も勉強してきたのに英語が話せない人が圧倒的に多いことからも明らかですね。

それでも、聞く分にはある程度はわかるという人も多いはず。ところが、それと同じくらい話せるかというと、そうではない。受け身の力だからです。

「英語がしゃべれない翻訳者は実はたくさんいる」というのも本当に翻訳者同士では珍しくもなんともない話で、通訳者だってこのことは知っています。

それから「辞書なんていらないでしょ?」と思われるのは通訳者も同じで、いきなり「○○って何(ていうの)?」と出し抜けに辞書代わりとばかりに質問されることも少なくありません。

コンテクスト(周辺情報)なしでは特定できないのは翻訳も通訳も同じですよね。

photo : slideshare.net

(つづく)

© 2018 I INTERPRET LONDON

Theme by Anders NorenUp ↑