I INTERPRET LONDON

ロンドン在住の通訳者平松里英のブログ

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国際女性デー Vol.1

ロンドン在住通訳者の平松里英(rielondon)です。

3月8日は国際女性デー。

カナダのトルドー首相 ソフィー夫人SNS炎上

カナダのトルドー首相夫人がインスタグラムで人々に訴えた内容が、炎上したそうです。
ソフィー夫人のインスタグラムの当該投稿リンク

国際女性デーは、女性を支えてくれる自分の「同盟相手」の男性も祝福しよう、
つまり、ジェンダー平等を一緒に推し進めてくれる男子、男性も取り上げるべきだ、
ということのようです。

以下、カナダのガーディアン紙(英語記事)

彼女の提言については、意見が二つに割れています。
インスタグラムの彼女の投稿に寄せられたコメントのいくつかを挙げてみます。

“Embarrassing. She doesn’t get it.”
恥ずかしい。この人、全然わかってない。

 

“I am not a woman unless I have a man. Thank you for reminding me.”
男がいなければ私は女じゃないってことね。思い出させてくれてありがとう。[皮肉]

 

“Celebrating #iwd2017 by celebrating men. Nope, try again.”
男性を祝福して♯iwd2017(国際女性デー)を祝いましょう。ありえない。はい、やり直し。

 

“She wants IWD to be a celebration of Justin Trudeau. She should be celebrating the powerful women in her life!”
IWDを夫、ジャスティン・トルドーを祝う日にしたいだけでしょ。[そうじゃなくて]自分の人生で出会ったり、関わったりしたパワフルな女性たちを祝福するべきでしょ!

私は、基本的に、ソフィー夫人の考えに賛成です。

ただ、国際女性デーには、女性を称えるべきだという主張は、たしかに一理あると思います。

そもそも「国際女性デー」って何?

ここで、国際女性デーって、どういうものなのか、
どういう日なのか、見てみましょう。

国連女性機関の日本事務所のウェブサイトによると

国際女性デー(IWD)とは

国連は、1975年の国際婦人年において、3月8日を国際女性デー(IWD)として定めました。そして2年後の1977年12月、国連総会は、加盟国がそれぞれの歴史と伝統に応じて、1年のうち1日を女性の権利及び国際平和のための国連の日と宣言できる決議を採択しました。

国際女性デーは、20世紀への変わり目に、北アメリカおよびヨーロッパ各地での労働運動から始まりました。このような初期の時代から、国際女性デーは、先進国及び途上国ともに、女性のための新しいグローバルな姿をとりあげてきました。この成長し続ける国際的女性運動は、4つの世界的な国連の女性会議によって強化されています。 そして、女性の権利、及び政治・経済活動の場への女性参画をサポートする結集の場を記念する国際女性デーを支援しています。

国際女性デーは、これまでの前進を振り返り、変革を呼びかけ、国や社会の歴史上すばらしい役割を果たした一般の女性たちの勇気と決断を称える日です。

とあります。

国際女性デーの起源

では、国際女性デーの起源は?というと、アメリカやヨーロッパ各地で起きた徐栄による労働運動です。
1900年代のアメリカのニューヨークで服飾工場の女性労働者が起こした抗議運動や、
イギリスで起きた女性参政権(ちなみに参政権は Suffrage)運動など。

これら、女性による一連の社会運動や抗議デモ、その不屈の精神を称え、
同時に、未だ被害者となる女性が後を絶たないことに、真剣に思いを馳せる日なのです。

イギリス女性参政権論者「サフラジェット」

イギリスの女性参政権を訴え戦ったメンバー(闘士たち)はSuffragetteと呼ばれました。

ちなみに、2015年にはそのままの名称 “Suffragette” で映画になりましたね。
(邦題『未来を花束にして』) ←まったく「婦人参政権論者」ということが伝わってこないタイトル(悩)

  • 映画 “Suffragette” 公式予告 YouTube(https://www.youtube.com/watch?v=056FI2Pq9RY)

ハンガーストライキなど、壮絶な抵抗運動を続け、
イギリスで婦人参政権が認められたのは1918年。

イギリス|女性だけじゃない、男性にも参政権がなかった。

1918年の選挙法改正。
この時、初めてイギリスで普通選挙制が実現したのです。

21歳以上の男子と30歳以上の女性に選挙権が認められました
つまり、これまではイギリスには普通選挙制がなかったということです。

Before 1918, the vote was restricted not simply by sex but also by property qualifications.
1918年までは投票は制によって制限されるだけでなく、財産資格によっても制限されていた。

出典:“Why has everyone forgotten about male suffrage?” (どうして誰も男性の参政権について覚えていないのだろうか?)

婦人参政権と聞くと 男性にはもともと参政権があった かのように思ってしまいますが、そうではありません。

女性だけでなく、男性も限られた人(資産家)しか、選挙権が与えられていなかったのです。

 

ところで、

世界で初めて婦人参政権を認めた国はどこでしょう?

 

 

 

それは、アメリカでも、イギリスでもなく、

ニュージーランド。

 

ニュージーランドでは、1893年に女性参政権を実現。

イギリスで普通選挙制が認められる25年前。

つまり、四半世紀も前に、すでに、

遠く離れた南半球の島国、ニュージーランドには女性に選挙権があった!

 

同じ島国でも、ジェンダーにおける進歩が随分と違いますな(ため息)。

 

そこに裏打ちされているケイト・シェパードの精神

All that separates, whether of race, class, creed, or sex, is inhuman, and must be overcome.
道徳心の向上には人種、階級、信条、性別による分離を克服しなければならない。

 

すばらしい信念ではありませんか!

 

アメリカ、そして欧州でもポピュリズムが台頭してきて、

大衆迎合主義、右傾化、孤立主義、分離…

 

これまでの価値観や戦いに逆行するような動きをバッサリと切り捨てるこの考え方。

いいねぇ!ああ、スッキリ。

 

イングランドはリバプール出身のケイト・シェパード。

彼女の女性参政権運動の指導の下、
何度も議会に請願書を提出した末、1893年に可決されたのです。

こういった土壌があるからでしょうか。
男女の賃金格差は、アメリカよりも、ニュージーランドのほうが小さいのです。

 

ちなみに、

日本は世界ワースト3入り(3位)。
女性が管理職に占める割合は先進国中(ここではG7)、堂々の最下位

出典:Global Gender Gap Report 2016(世界経済フォーラム2016)

 

でも、悪口(笑)ばかりではありませんよw

先日、とても励みになる素晴らしい発言を発見。

世の中の半分は女性なのに、マネジメント層は男性ばかり。

優秀な人は男女を問わず優秀。これでは片翼しか使わずに飛行しているようなもの。

企業が成長できるわけがない。

 

ポイントはある。1つは、トップがはっきりコミットする。さらに数字でコミットすること。登用は上からやる。下級の管理職から細々とやるのではなく、上級管理職を早く女性にすれば、あとは早い。

これ、カルビーの松本社長のコメントです。

 

私から見たら、当たり前であるべき、合理的で、シンプルな話なのですが、

なぜ、こんなに男女参画だ、ジェンダー平等だというと、難しいのでしょうかね。

 

男性にとことん不都合な事でもあるんでしょうか…?

 

そういえば、うちは夕飯はほぼ毎日夫が作りますし、掃除も洗濯もやります。

(難しいことでもあるまいし、こんなことを記述しているのが、馬鹿らしい…)

「家事ができる夫の方が離婚率が高いらしい、なんでかな。」

と言っていたので、お互いが独立しているから別れる時も迷いが減るのよ、きっと。

夫が家事ができるのが悪いのではなくて、お互いが共依存度が低い証拠でしょう?と。

夫が家事ができる、そして実際に家事を負担する。

↑気が向いたときだけということも大いにあり得るので「できること」と実際に「やる」かどうかは別。

これは、

悪いことではなくて、良いことです。

大人ですからね。

 

お互いがしっかり自立して、尚且つ、支えあったり補い合えるほうが、

お互いに頼りあって、共倒れしてしまうより良いと思います。

 

名古屋の国際女性デー(IWD)イベント参加(昔)

考えてみると、イギリスに移って来てから、
つまり、もう10年もこの日を記念する活動やイベントには参加していないことになります。

日本にいた頃、
アイルランド留学よりも前ですから、20年近く前になるのですが、
地元の名古屋で、国際女性デーの活動に参加していた時期がありました。

その頃に仲良くしていた近所のイギリス人の友だちに誘われ、
集会に行ったのがきっかけでした。

私が参加した国際女性デーの活動。

そこではオーストラリア人女性のイベントのリーダー、
日本人の中心的役割を担っていた女性たちに、
アメリカ人の女性留学生や英語教師の面々など。

当日は、フレンドリーなパレードもしました。

詳しくは後日、Vol.2、Vol.3に続きます。

(つづく)

 

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Voice 02: 通訳者と発声とウィスパリングの関係

 

ロンドン在住日英通訳者の平松里英(rielondon)です。

 

今日は発声について

通訳における発声のポイントは、

「自然な、美しい声を、豊かに、スムーズに出すこと。」

 

朗々と、大きな声

を出すことよりも、

 

自然な声を

美しく

ゆたかに

なめらかに

出すこと。

 

では、そもそも発声とは何でしょう?

 

硬起声と軟起声

発声には軟起声と硬起声の二種類あります。

 

軟起声は、のどが開いた状態で、スムーズに自然に出る声。

声帯が中央にそっと寄ってきて合わさる感じです。

 

その反対に、硬起声は、声帯を強くぶつかるように合わせて、

声の出だしに、強いアタックを使うときは硬起声です。

 

通訳者は声を多用する(話者 全員分 しゃべる!)仕事で、常にのどを酷使しています。

硬起声は声帯への負担が大きく、つねに声を使う仕事をしている通訳者にとっては大敵!

通訳者にとって、声をサステナブルに使うこと。

大事な道具を持続可能な使い方をしているかどうか。

これは死活問題です。

 

硬起声になりがちな人は、

長期的に見ると、声帯ポリープや結節など、問題が発生しやすくなるため、

軟起声を心がけ、硬起声をやめるよう、注意しなければなりません。

 

声帯と呼吸

まず、声はのどや口だけで出すものではないということ。

いうなれば、上半身全体で出すものなので、精神的に緊張していたり、

体が硬直したりしていると、よい声は出にくいのです。

 

また、首筋や背中など、どこかに無意識に力が入ってしまう体勢(姿勢)もNG。

前かがみ、逆に、後ろにそっくり返り気味の姿勢では、ゆったりとした声は出にくいです。

 

心身ともにほぐすこと。この筋肉も含めて、リラックスした状態をつくる。

 

このことは、首や肩、背中だけでなく、顔の表情筋にも当てはまります。

しかめっ面やこわばった表情をしていると、それが体全体に伝わり、

声を出すときにも、声帯やそのほかの筋肉がこわばってしまうのです。

 

通訳者はとくに声を意識しなければならない

通訳者の声とは、聞き手にとって長時間にわたり耳にする声です。

そして、その聞き方も、なんとなく耳にしているというより、

ヘッドフォンやイヤホンを使い、集中して聴いていることが多い声です。

 

だから、長いあいだ聞いていても、聞き手にとって疲れない声であることが大切です。

 

自分の声の欠点にはなかなか気づかない

声の質はもちろん、声の出し方トーン調子…。

 

自分の声のクセは、自分一人では、なかなか気づけません。

 

常に耳を鍛え、自分の耳で自分の声を客観的に評価できるように

同時に、自分の声が他の人にどう聞こえているかどう響いているか、を常に考えること。

 

ウィスパリングのささやき声

ロシア語の会議通訳者 Cyril Flerov 氏も自身のブログの記事  “Whispering in Your Ear is Bad Idea!”のなかで、はっきりと提言しています。

 

“your voice gets tired extremely quickly, whispering is very damaging to the vocal folds

すぐに声が疲れてしまい、ウィスパリングは声帯へのダメージも大きい)

 

ないしょ話のときに使うヒソヒソとした「ささやき声」は、

のどを震わせず、それでも声門から息は出ているので、

ボリュームが小さく、一見やさしそうなイメージですが、

 

声帯への負担は大。

 

のどを震わせず、聞こえにくい分、余計に声帯に力をかけているのです。

通訳の仕事のなかでウィスパリング※ をするよう依頼されることがあります。

※シュショタージュ(Chuchotage=フランス語でささやくの意)ともいいます。

 

とくに、会議・ミーティングで発言の言語がわからない人が1人や2人など、

少人数のときに、この手法がよく使われますが、気を付けなくてはいけません。

 

だからといって、リクエストに対して、

「のどに悪いのでウィスパリングはお断りします」

とは言えませんから、

 

のどに負担がかからないように、ささやき声ではなく、小声で行うようにするということです。

小声、つまり、ちゃんと声を出しているけれども、ボリュームは小さく。

 

意識してみて下さいね。

 

 

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▶ 関連記事 母音の無声化 (キ・ク・シ・ス・チ・ツ・ピ・プ・ヒ・フ・シュ)

 

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Photo: https://aidanews.com/2014/06/19/whisper-voice-makes-the-muscle-hypertonia/

フォーカスグループインタビュー(FGI)の通訳 [2] 表現と通訳

FGI

FGI

ロンドン在住日英通訳者の平松里英(rielondon)です。

今回は 表現と通訳 について取り上げます。前回は通訳環境についてでした。

フォーカスグループ(グルイン)のワークシートで使う表現

「フォーカスグループ」あるいは「グルイン」のセッションの中でよく使われるワークシート。もともと日本語で書かれているものを、海外の対象者向けに現地の言語に訳されるのが普通です。このときポイントになるのが、日本語で表現されているニュアンスがターゲット言語でもそのまま、あるいはできるだけ近い感覚で伝わるかどうか。

商品のイメージを伝えるフレーズは、つまり商品のコピーであることが多い。コピーライティングされているので、日本語がかなり練られています。しかし、その効果は日本語だから通じるのであって、他言語に辞書的に置き換えても、ニュアンスは伝わりません。

100%、伝わることは「ない」と思った方がいいでしょう。

これがいわゆる「ロスト・イン・トランスレーション」です。

ではどうやって準備したらいいか。

事前に翻訳を依頼し、翻訳してもらったものはそのまま使わず、モデレーターとの事前打ち合わせの時間を使ってじっくりとすり合わせすることです。

たとえ日本なら誰でもわかる感覚でも、海外ではダイレクトには通じないことがあります。

その概念自体が存在しない、

その体験自体が存在しない、

その感覚自体なじみがない、

など、フォーカスグループ(グルイン)の依頼主の意図を理解してもらうことが思いのほか手こずることも。

おいしいコーヒーを飲みたいと思ったらカップを温めておくように、

収穫率の高いグルインを実現させるには、適切な準備こそが成功させるコツ。

通訳を入れて効果的に事前の意思疎通を図ることは適切な準備のひとつです。

そのためにも当日の打ち合わせ時間は十分に取り、通訳者を交えて、打ち合わせを行うことをお勧めします。では通訳なら誰でもいいのかというと、もちろんそうではありません。

同じプロでも、いろんな通訳者がいるからです。

フォーカスグループ(グルイン)では

  • 適任の通訳者を選ぶこと
  • 通訳が入ると2倍時間がかかることを覚えておく

この2点を押さえておくことが大切です。

適任の通訳者を選ぶには

第一に、現地のことばに詳しい人であること。つまり、ロンドンで行うグルインならロンドンの通訳者を使うこと。当たり前に聞こえるかもしれませんが、そんなことはありません。例えば、電話通訳だからとアメリカにいる通訳者やオーストラリアにいる通訳者につないでしまう会社もあります。英語の通訳者ならどこの国でも同じ、と手配する会社ですら、そういう思い違いをしているくらいなのですから。

二番目に、当該商品あるいはカテゴリーに関心がある人か、ある程度マーケティング分野に明るい人。

三番目に、ことばの温度を擦り合わせることを心得ている人。普段から日本語のコピーはもちろん、英語のコピー、とくに自分が住んでいる地域で目にするコピーに関心を持って触れている人。キャッチコピー、リードコピー、ボディコピーなど何でもいいのですが、表現やことばのリズムに対してアンテナが立っている人。 コピーライティングの心得があると話が早いのでいいですね。

また、表現のすり合わせでは、元の表現(起点言語)と英語の表現(目標言語)との温度色合いを近づけることのほかに、実際のグルインのやり取りの中で使う表現として適しているか、というのも忘れてはならないポイント。

通訳が入るミーティングの時間は2倍

もう一つ忘れてはならないのが、通訳が入るミーティングが時間を長めに見ておく必要があること。
グルインで使う最適な表現をじっくり、かつ効率的に話し合うなら、対面で逐次通訳が一番適しています。

逐次通訳の場合、双方の話し手と通訳が交互に話すため、実際の内容の2倍程度の時間がかかるのです。内容的には「30分あれば大丈夫かな」というようなミーティングなら1時間見ておく必要があります。

フォーカスグループ対象者の発言のなかの表現

グルインを通して意味だけ訳出していけばいいと考えるクライアントと、ことばもピックアップしているので英単語と日本語の意味と両方ほしい。できれば発言がネガティブなのかポジティブなのか、どちらかわからないので適当に応えているのか、そのあたりのニュアンスが分かるように訳してほしいとおっしゃるクライアントも。

アウトプットの方法は、ひとつにグルインと言っても、案件ごと、クライアントごとに異なるので、事前に話し合っておくといいでしょう。

フォーカスグループのセッション中の表現について

今回、日本語のこの単語(フレーズ)には英語ではこの単語(フレーズ)を当てはめる、というように何度も登場する表現や、キーとなる語やフレーズがある場合には、あらかじめ統一しておくと、グルイン実施のあとのまとめ作業や分析もしやすくなると思いますよ。

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▶ 関連記事 フォーカスグループインタビューの通訳[1]

 

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フォーカスグループインタビュー(FGI)の通訳 [1] 通訳環境について

ロンドン在住日英通訳者の平松里英(rielondon)です。今回は、シリーズ第1弾—通訳と音量についてです。

フォーカスグループインタビュー とは

マーケティング調査の方法には、「定量調査(Quantitative Research)」と「定性調査(Qualitative Research)」があります。定量調査は、「量」。つまり明確な数値・量であらわされる定量データを集め分析するもの。定性調査は「質」。つまり、数値化できない個人の発言・行動を解釈し新しい理解やヒントにつながる「質的データ」を取る調査のことです。頭文字をとって「FGI」、または略して「グルイン」とも呼ばれます。

後者の「定性調査」の手法のひとつとして、フォーカスグループインタビュー があります。少人数の想定購入者からなる参加者グループに司会者(モデレーター)が進行しながらディスカッションを進めます。そこで繰り広げられる発言内容を分析するものです。

なぜ通訳が必要になるのか

フォーカスグループインタビュー でなぜ通訳者が必要になるかというと、対象者が依頼者(クライアント)のわからない言語を話す場合(非日本語話者)、つまり海外の想定購入者を相手に調査を行うとき、通訳が必要になります。この場合、所定の時間(1セッション2時間程度が多い)で約4~8人の複数の人が代わる代わる発言するので、通訳モードは同時通訳になり、同時通訳対応の設備が必要になります。(ユーザーインタビューなどは逐次通訳の場合もあります。)

フォーカスグループインタビューでの通訳環境の重要性

クライアント(企業)と同じ部屋(対象者+モデレーターのいる部屋とマジックミラーで隔てた反対側の部屋)で行うときと、別の部屋で通訳をする場合とがあり、通訳を取り巻く環境に関しては、主に以下の4つのパターンがあります。

同室/別室 通訳への音のインプット 通訳のアウトプット
〔1〕 同じ部屋 セッションのやり取りはヘッドフォンから 通訳の訳出は普通の声で
〔2〕 同じ部屋 セッションのやり取りはスピーカーから 通訳の訳出は耳元でウィスパリング
〔3〕 別々の部屋 セッションのやり取りはヘッドフォンから 通訳の訳はヘッドフォンから
〔4〕 別々の部屋 セッションのやり取りはヘッドフォンから 通訳の訳はスピーカーから

〔パターン1〕

同じ部屋の場合、よくあるのは対象者やモデレーターの声(セッションをやっている部屋からの音)は通訳者の耳にヘッドフォンから流れてきて、クライアントの人たちは通訳者の声をそのままマイクを通さずに聞くことが多いです。

〔パターン2〕

同じ部屋で、対象者やモデレーターの声(セッションをやっている部屋の音)はクライアントも通訳者もスピーカーから聞き、通訳者の訳出はクライアントの耳元でウィスパリング。

〔パターン3〕

別の部屋で、通訳者の訳をマイクで拾ってクライアントの部屋のスピーカーで流し、セッションの中での外国語でのやり取りはヘッドフォンで(クライアントのうち)聞きたい人は聞く。

〔パターン4〕

別の部屋で、クライアントの中で英語のままで分かる人が多い場合は、セッション(対象者とモデレーターの英語のやり取り)はスピーカーで流し、通訳の訳はヘッドフォンで通訳が必要な人だけ聞くというパターンもあります。

ベストパターンとワーストパターン

では、このなかでベストのパターンと最悪のパターンはどれでしょう。

ベストは〔1〕、そして最悪なのは〔2〕のパターンです。1・3・4は通訳者の耳にはヘッドフォンで音が送られてきますからインプットの条件は(ほぼ)同じです。では「なぜ1がベストか」というと、

  • 視界がクライアントと同じであること(別部屋=通訳部屋は狭く視界が悪いことが多い)、
  • クライアントとのセッション中のコミュニケーションが比較的はかりやすいから。

他方、最悪のパターンはどれかというと「2」で、その理由は、通訳者がインプットをクライアント全員と同室でステレオから聞かなければならないこと。

なぜそれが問題なのか。

クライアントはセッション中お互いに相談をしたり、談笑したりすることもあります。それだけではありません。ドアの開閉、その他にも様々な雑音が発生します。

ノイズの発生頻度(リスク)が一番高いので、通訳作業が妨害されるのです。

しかも、インプットを確保するため、また、通訳が必要なの人がクライアントのなかの一部の人であることもあり、アウトプットはウィスパリングになります。

このとき、

通訳者は黙って聞いているのとは違い、自分の声が自分の耳に聞こえている状態です。

どういうことかというと、

外から耳に入ってくる自分の声、それプラス、骨伝導で耳に入ってくる自分の声が邪魔になるのです。訳さなければならない音声(話者の発話)を聴くことに集中したい。それにも拘わらず、不可避に自分の声という邪魔が入ってきます。

聴きながら話しているためです。ステレオからの音が黙っているときのようにはきれいにきこえません。

これが、聞いているだけの作業と、同時通訳の作業の決定的な違いです。

このように、同時通訳をするときは常に邪魔が入るので、できる限りノイズを減らし、元発言のインプットを確保するようにしなければなりません。

大事なことなのでもう一度、言い換えてみます。

同時通訳作業では、インプットアウトプットの音が干渉してしまうのです。

当然、作業の大きな妨げとなります。

だからこそ「2」のパターンには無理があるのです。

通訳者は、ステレオから流れてくる音(英語)を頼りにしながら、「生耳」(=ヘッドフォンからではない)で聴き、クライアントにウィスパリング(アウトプット)しますが、ステレオから流れてくる音のボリューム(インプット)よりも通訳者の声(アウトプット)のボリュームが大きくないとクライアントには聞こえないので、ある程度大きな声を出さなければなりません。同じ空間で、です。

しかし、上で説明したように、大きな声を出すと自分の声が邪魔になって、インプットがとても聞こえづらい

そして、「2」の場合、ヘッドフォンで別ルートから音源を取る、つまりインプットをバイパスする、ということができません。インプットが確保できない。

部屋の中で歩くときの靴の音やドアの開け閉めの音、クライアント同士の話し声や、冷蔵庫の開け閉め資料(紙)をめくる音など様々なノイズがたくさん!

このなかで行うのですから、ノイズの三重苦になってしまうのです。

このようなことから、せっかくの対象者のレスポンスが十分に拾えなくなってしまうので、この方法はお勧めできないというわけです。

通訳環境:最重要ポイント

どのパターンにも共通して重要な要素は音量です。そのことを音響システムを調整しているテクニシャン(技術者)が心得ていて、スタジオ設計にも反映されていればいいのですが、音質・音量の調整がほとんどできないスタジオもあるので場所を選択する際に気を付ける必要があります。

発言が重ならないよう、一人一人順番に話してくれるよう、どれだけ参加者に注意を促しても、発言が重ってしまうことが多い。これは他の通訳の仕事と大きく異なる点です。

通訳者は音量を上げたり下げたりして、条件を調整するしかありません。

また、自然な発言、自由な発言を集めることが大切になりますから、発言が重ならないようにモデレーターに何度も注意させれば、話の流れを遮ったり、場の雰囲気をぎくしゃくさせてしまいません。これでは、そもそもの目的が損なわれてしまいます。

やはり、フォーカスグループインタビューでは、音量コントロールが通訳側でできる、音調整能力の高いスタジオを選択することが重要なポイントです。

最後までお読みいただきありがとうございます。今回の記事はいかがでしたか。ご質問、コメント、そしてご相談も大歓迎です。コメント欄、お問い合わせページ、またはTwitter からどうぞ。

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国連事務総長 就任「2017年を平和の年に」演説

Appeal for Peace 01.01.2017

ロンドン在住日英通訳者の平松里英(rielondon)です。今回は 国連事務総長正式就任2017年年初の演説 を取り上げます。「気になる英語表現」は最後にあります。

 

【今日取り上げるニュースメディア】

UN News Centre New UN chief Guterres pledges to make 2017 ‘a year for peace’

【ざっくりサマリー】

✔ 新 国連事務総長にポルトガルのグテーレス氏が正式に就任

✔ 年初の演説で「2017年を平和の年に」と訴え

✔ 次期 国連事務総長に決まったのは2016年10月13日

✔ 任期は5年後の2021年12月31日まで

✔ グテーレス氏の略歴

2017年1月1日 新 国連 事務総長の正式就任

2017年元旦、第9代 国際連合事務総長にアントニオ・グテーレス(António Guterres)氏が国連総会(the UN General Assembly)にて正式に就任しました。

「これまでは安全保障理事会が候補を一人に絞り、この唯一の候補のみが国連総会に提案されていました。安全保障理事会でのいわゆる密室の協議で事実上決定されていたため、選出プロセスの閉鎖性に批判が集まっていました。」(http://www.unic.or.jp/news_press/info/18566/)

これを受け、2016年4月には国連初の試みとなる公開面談が行われ、10月に初めに国連安全保障理事会(the UN Security Council)が国連総会に勧告し、就任が確定しました。

そして、就任宣誓式(swearing in – ceremony)が12月12日でした。

激震の2016年、2017年は?

「一年の計は元旦にあり」

暗澹たる、そして激動・激震の2016年が幕を閉じ、続く新年の幕開けでの交代だけあって、

2017年を方向づける幸先の良い出発だったと、後で振り返れるよう願わずにはいられません。

国連事務総長の任期

さて、グテーレス新事務総長(Secretary-General)は1995年から2002年までポルトガルの首相を務め、

2005年から2015年までは国連難民高等弁務官(the UN High Commissioner for Refugees )として様々な活動に従事。国連事務総長の任期は5年なので、2021年末までということになります。

なお、第8代の国連事務総長 藩基文氏の任期は2007年から2016年までの10年間(つまり5年任期を2期)でした。

これまでは、近年では、第6代事務総長 エジプトのブトロス・ブトロス-ガーリ氏が、アメリカが再選に際し拒否権を発動したため5年で退任した以外は、第7代 コフィ・アナン氏、第5代 ハビエル・ペレス・デクエヤル氏も2期(10年)務めています。

事務総長による新年のスピーチ全文

新事務総長は新年の抱負として、“Peace must be our goal and our guide” と述べ、2017年を平和に向けた年とするようすべての市民、各国政府、指導者たち(all citizens, governments and leaders)に向けて様々な相違を超える努力をするよう(to strive to overcome differences)訴えました。

2017年1月1日 国連事務総長スピーチ 平和への訴え -全文-(Appeal for peace from UN Secretary-General Antonio Guterres)

他メディアの関連ニュース

2016年10月13日のCNNニュース「国連がポルトガルのアントニオ・グテーレス氏を次期事務総長承認 (UN approves Portugal’s Antonio Guterres as next secretary-general)

では、10月5日に逃げ切りの最有力候補as the Security Council’s runaway favorite)となっていた氏を193加盟国の全会一致で次期事務総長となることを承認したと報道されています。

どんな国連事務総長になるでしょうか。

2016年10月6日のBBCニュース 「グテーレス氏とは誰なのか。次期国連事務総長の人物像 (Who is Antonio Guterres? Meet the UN’s next secretary-general)」では、

グテーレス氏は副事務総長に女性を起用すると予想されます。「男女共同参画」の国連における重要性を説いてきたからです。

He is widely expected to select a woman as deputy secretary-general, having said that “gender parity” is crucial at the United Nations.

とあり、

ヨーロッパ外交評議会の研究員、リチャード・ゴワン氏によれば、内部関係者はポルトガル出身のグテーレス氏が「国連に必要な『尻叩き』をしてくれるのではないか」と話している、とのこと。

Richard Gowan, a UN expert at the European Council on Foreign Relations, said insiders believed Mr Guterres, from Portugal, “could give the UN the kind of kick up the backside it needs”.

グテーレス氏の背景

グテーレス氏は、50年余り続いたポルトガルの独裁政治が終焉した1974年に社会党に入党し、間もなく専従の政治家になりました。[それ以前は大学で電気工学と物理を勉強し助教授をしていた。]

He joined the Socialist party in 1974 – the same year five decades of dictatorship came to an end in Portugal – and soon became a full-time politician.

 

1995年には社会党の書記長に就任、のちに首相に就任し2002年まで務めました。

In 1995, three years after being elected the Socialist Party’s secretary-general, he was voted in as prime minister, a position he held until 2002.

 

今回の国連事務総長の指名前のUNHCR(国連難民高等弁務官)としての経験が今回の人事への試金石(=意訳)となりました。

Prior to his nomination, he said that his work at the UNHCR had been excellent preparation for a secretary-general.

第9代 国連事務総長の役割

事務総長の役割(The role of the Secretary-General)」に、以下のように記されています(抜粋)。

立場が対等な外交家であり唱道者であり、公務員であり、CEOである、事務総長は国連の理想の早朝であり世界の人々、なかでも特に貧しく弱い人々の利害における代弁者である。

Equal parts diplomat and advocate, civil servant and CEO, the Secretary-General is a symbol of United Nations ideals and a spokesman for the interests of the world’s peoples, in particular the poor and vulnerable among them.

 

《注目の英語表現》

  • The UN Security Council  国連安全保障理事会
  • The UN General Assembly  国連総会
  • gender parity  男女同権、男女共同参画
  • at the helm of the United Nations  国連の舵取り役に当たり
  • civilians are pounded with deadly force  市民が致死性の高い武力で猛攻撃を受けている
  • forced from their homes, dispossessed and destitute  家を追われ、貧窮しており
  • fueling cycles of mistrust and fear that can last for generations  不信と不安の循環のエネルギーとなって何世代nにも続く可能性がある
  • peace must be our goal and our guide  平和が私たちの目標であり、手引きでなくてはならない
  • I appeal to you all  懇願する(切に訴える)
  • equal parts diplomat and advocate  立場が対等な外交家であり唱道者
  • the poor and vulnerable  貧しく弱い立場にある人々

 

今年最初の記事は1月1日のグテーレス氏のスピーチの中から、次のことばで締めくくろうと思います。

それではまた!

 

“all that we strive for as a human family […] depends on peace.

人類 として私たちが尽力することのすべては平和にかかっています。

But peace depends on us.”

ところが、平和は私たちにかかっているのです。

 

ご質問、コメント、そしてご相談も大歓迎です。コメント欄、お問い合わせページ、またはTwitter からどうぞ。

 

▶ 関連記事 国際連合広報センター「この人に聞く:次期国連事務総長に任命されたアントニオ・グテーレス氏」

 

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カテゴリー:世界の動きと英語

日本の食文化紹介 和菓子

きれいですよね。和菓子って、素敵だなとおもいます。
昨年の秋、ラグビーワールドカップイングランド大会と時を同じくして日本を紹介するシリーズイベントがありました。
その中の食文化を紹介する小イベントで和菓子の紹介を通訳する機会を得ました。
通訳仲間から連絡が入ったのです。
それは泊まりの外出先へ移動中の電車の中でした。
それで、その仲間に「いつ?」と聞けば「明日の朝」とのこと…。会場が自宅から目と鼻の先ほどの近場だったこともあって声を掛けてくれたのでしょうか。
 
あいにく、その日に限って泊まりで遠出中だったのです。
 
しかし「直前だからなんとかお願い!」と頼まれ、翌朝には帰ってくる予定であったので、断るわけにはいきません。
 
翌朝ゆっくり帰るつもりを急いで切り上げることにして、エイヤッと引き受けました。
が、コンピュータもなければ、ケータイの通信すらおぼつかず、何より出先ですからWiFiが使えません。
しかもお出かけ中だったんだから資料らしきものなんかひとつもない…。イギリス国内とは言えど、海辺に近い(つまり文明品がない)のどかな場所だったので。
話題は和菓子。職人さんが実演をしながら説明するのを通訳するのです。
和菓子といえば、なじみはありましたが、もっぱら食べることが中心。作ったり説明なんて想定したことがない。
その歴史や精神、詳しい作り方や材料については詳しいとは嘘にも言えず、この時ばかりは茶道の心得でもあれば、きっと助けになっただろうにと悔やまれました。
 
でもなんとか乗り切らなければなりません。観客を前に実演で和菓子を通訳するとなると、英語でなんと表現したら良いものやら…。
 
私はじつはお菓子を作るのが好きな方なのですが、それもケーキやらパイやらと洋菓子で、和菓子の道具や材料、作る時の手順や動作について詳しくないんです。
でも、その「心」を伝えねば。
ネットは繋がらないし、翌朝本番だし、でもなんとか出来る限りの準備をということで、頼れるものはiPhoneだけ。しかも時間は電車が到着するまで。途中何度もネットが途切れつつ…。
調べ物をして、準備をする機器としては小さい。このiPhoneの画面とにらめっこしている私の様子は周りの人にはきっと鬼気迫るものがあったでしょう…鬼のような形相だったに違いありません(苦笑)
 
お茶請け
上生菓子
主菓子
打ち物
自然薯
和三盆
生砂糖(きざと)
おうす
落雁
求肥
栗きんとん
おしるこ
最中の皮
丹念に
刻む
練る
漉す
煮詰める
見て楽しむ
詫び寂び
研鑽を積む
 
などなど…
 
どうでしょう、これらの言葉サラッと英語になりますか?
 
いやぁ私はサラッと納得のいく表現は出てきませんでしたね。
 
それでもわかりやすく、素早く伝わる表現を考えて、頭に入れなければならない。
 
私がiPhoneにらめっこしながら一夜漬けならぬ付け焼き刃もいいとこ、突貫工事で捻り出した対訳例。
 
次回はそれをご紹介しますね。
 
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